ハリエット・ヴァン・レーク/作 野坂 悦子/訳 25P 朔北社
【目に見えないものは描けるのだろうか?】
ヒルマの原点となる場所は、たぶんアデルソ島で夏を過ごし外で遊んだ島です。ながされる雲、砂浜にうちよせる波、ちいさな虫、鳥、魚。葉っぱや花たちなど、自然界の美しさに惹かれていきます。
ヒルマは未来は考えました。そして何よりやりたかったのは、
「自然をとらえて 描くこと。」
ここからヒルマの挑戦が始まります。それは目には見えないものを、どのように絵として表現できるかということです。果たしてヒルマは自分が描きたい絵を描くことができるのでしょうか?
落ち着いた色彩にて、ふんわり柔らかく優しい絵のタッチで、ヒルマの歩んだ道を美しく描いています。
【丈太郎のひとりごと】
抽象画というものは、そこに存在するものを描くのではなく、自分の感情や思考、つまり自分の頭の中に広がっている宇宙を表現するものです。よって、その作品を鑑賞する側から言えば、自由にその作品を自分の解釈で楽しむことができます。しかし、逆の捉え方をすると「意味が分からない」などと思うこともあるでしょう。
抽象的な表現には必ず作家の葛藤があり、あらゆる事象に対して敏感に察知する能力も試されます。「そこに存在するもの」=「目に見えるもの」ではないということが、抽象的な表現には必ず付きまといます。
そのような挑戦にいち早く挑戦したヒルマの名前が、芸術に詳しい人たちにも知られていないのは、彼女が亡くなる際(1944年没)に、死後20年は公開しないように言い残したため、なかなか世の中には知られる存在ではなかったのです。
そんなヒルマ・アフ・クリントというアーティストが歩んだ美しい人生を、感じてみてください。