三浦太郎 /作 38P 偕成社
【前からとうしろから、ふたつのお話が楽しめる絵本】
僕は生まれて初めてお父さんの生まれた海辺の町に行きます。その町には白い灯台があると、有名な画家の書いた絵葉書を見せてくれました。僕はまだ海を見たことがないのでとても楽しみです。
こんな日記からお話は始まります。朝早く白い車で山の家を出発して、色々な景色を見ながら海を目指します。牧場、田んぼ、駅、新興住宅地、ショッピングモール、高速道路、工場などを経て海が見える大きな橋を渡ります。そして港や漁港を通り、灯台のある場所にたどりつきます。
次は後ろからお話が始まります。私は初めてお母さんの生まれた山へ行きます。その家からは赤い鉄橋と大きな山が見えるらしいと古い写真を見せてくれました。早く、おじいちゃん、おばあちゃんに会いたいと思いました。
こんな日記からお話が始まります。赤い小さな車で海を目指していた僕とは正反対の景色の移り変わりを見ながら山へ向かいます。
この絵本だけで2つのお話が同じ画面で上下に分かれて進んでいきます。
作者の卓越したデザインセンスが存分に活かされた絵がカラフルに海へ行く子と山へ行く子の違う目線でカラフルに描かれています。
【丈太郎のひとりごと】
日本だけでだけなく、世界中で人気を博している三浦太郎の新刊です。これも三浦さんらしい素晴らしいセンスとアイディアできっと世界の子どもたちに喜ばれる絵本になると思います。
同じ画面構成を前から後ろから読み進めますが、感じることは僕と私では違います。その感覚も面白い!
そして、洗練されたデザインの中にも人肌の温かみを感じます。
前から後ろからじっくり子どもと読んでみてください。きっと三浦太郎の優しさが伝わってくるはずです。