【コラージュ好きには堪らない!台湾人作家の描いた絵本】『HOME』

【コラージュ好きには堪らない!台湾人作家の描いた絵本】『HOME』

林廉恩/作 一青窈/訳 40P 山烋のえほん(工学図書) 

【コラージュが主体に描かれた「HOME」の数々が美しい!】

僕のおうちから毎日出かけて行きます。この道をひたすら真っ直ぐ進めば、また道にぶつかります。

青い車といつも一緒に「ガタコン ガタコン」、海は渦巻く波で「ざばん ざばん」、「ぴゅうるり びゅう」と実りの秋が覗いています。さて車を停めたらひと仕事です。

仕事が終われば、帰り道が続いて行きます。そして、最後は必ず、、、。

コラージュを多用して描かれた家や町の風景がとてもアーティスティックで、言葉少なめでもしっかりと情景と心情が伝わってくる暖かさを感じる絵本です。

【丈太郎のひとりごと】

一青窈と言えば歌手のイメージが大きいですが、彼女は台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期を台北で過ごしたようです。

そんな彼女が今回、台湾人作家の描いた絵本を訳しました。文章は本当にシンプルで最小限の情景描写と心情にとどめていることが印象的です。原文を知らないのでなんとも言えないのですが、理屈っぽさがなく、その囁き、呟きのような文体が絵の世界観を邪魔することなく「ちょっとだけ添えられている」という立ち位置が、読にたっぷりと「余白」を用意しているように思えます。

絵は僕が大好きなコラージュが多用されていて、個人的にものすごく好きな世界観です。ちなみにコラージュと言う言葉に馴染みがない方に説明を簡単にすると「様々な素材を貼り合わせて一つの作品を作る技法」です。

こうやって書くと絵が描けなくても誰もが「コラージュ」作品を制作できると思われるかもしれませんが、そこにはものすごいセンスが必要とされます。ただあらゆるものが貼り付けただけであれば、それはゴチャゴチャしているだけで、芸術性を感じません。

しかし、今作は本当にセンスの良いコラージュ作品です。密集しているページとスカスカなページのバランスが絶妙で、しかもコラージュでは難しい奥行きのある立体感のある構図が見事です!

今作はタイトル通り「家」が主役です。その家の在り方について、著者、訳者ともに「あとがき」にて記しているのですが、その「あとがき」にも本編とは異なるアナザーストーリー的なものが書かれていて、興味深いところです。

それにしてもここ数年、台湾や韓国をはじめアジア人アーティストの活躍が絵本だけでなく、音楽などアート全般で広がっています。とても良い事だと思いますし、今後もっと増えていくであろうアジア人アーティストに大きな期待を持っています。

ちなみに私の父は台湾生まれです。祖父が第二次世界大戦中の任務先が台湾であったからです。実際には1歳半ぐらいまでしか台湾にいなかったので記憶などないようでしたが、祖母はよく台湾の話をしてくれました。

そんな意味でも何だか自然に親しみが沸く絵本です。

コラージュ作品が好きな方は是非ともお手元に!