蟹江 杏/作 224P 河出書房新社
【みんなと違っていても良いんだ!自分らしく生きる!】
主人公のマコはお絵描きが大好きな小学4年生。学校生活に不満はないが、どこか他の子どもたちと違う違和感を感じながら生活をしています。
ある日、土手沿いに、屋根の上に巨大な足形の鉄のオブジェをのせた風変わりの家を見つけました。美しい葡萄の彫刻の門には「フローレンス美術教室」と看板が目に入り、マコはその名前に惹かれていき教室に通うことにしました。
しかし、そこの森のような庭には、あちらこちらに不思議な彫刻が見え隠れし、近所でも怪しい家と言う評判でした。そして、マコが想像する「芸術家」とのイメージとはかけ離れた小汚いオッサンが住んでいました。
ちょっと変わった感性を持ち学校でも浮いているマコが美術教室に通うことになり、いろんな大人たちと出会い、そして、期待感、喪失感、絶望、希望の光などの感情が多々に揺れうごきながら成長していく物語です。
【丈太郎のひとりごと】
作者は僕と高校が一緒です。その縁から知人となりました。画家として大活躍をする日々、『ハナはへびがすき』(福音館書店)と言う絵本も描いています。
その絵本もこの本も杏ちゃん(馴れ馴れしく名前で呼んでます。)自身の幼少時のことをきっと書いているのだろうなぁと思いながら読み、あとがきを読むとその勘は的中で半分ノンフィクション、半分フィクションとのことでした。
知り合いだからと言う訳でもなく、この本は初めて書く小説なのに、とても良過ぎて物語の中にどんどん吸い込まれていきました。別に暗い話でも冒険の話でもないのに読みながら自分がドキドキしているのを感じました。
「このドキドキ感はなんだろう?」
喜びなのか?悲しみなのか?楽しみなのか?どのような言葉でも表現できない感情でした。そして「普通」と言う曖昧なラインは何のためにあるのか?「普通」から逸脱したら社会から疎外されてしまうのか?そんな疑問を持ちながら読み進めました。
そして、子どもは出来るだけ「普通」ではない大人との交流が、その後の人生を左右するのだと思いました。同じくらいマコの両親のように優しく何もかも受け止め、良い意味で子どもを「子ども扱いしない」大人も必要であると思いました。
文章はとても素直で読みやすく、長文が苦手な子ども、大人でも読みやすいと思います。
小学高学年から大人まで幅広く、この本を楽しむことができると思います。
きっとこの本を読み終えた時に自分の中に潜む「何か」を見つけることができることでしょう。
その「何か」を大切にして欲しいと思います。