中山信一/作 32P 偕成社

【何かの音が聞こえたら、「じーっと」その視線の先にあるものは?】

「ゴォーッ」と音が聞こえます。男の子がその先を教室の窓から「じーっと」と見ると青い大空に飛行機が飛んでいます。

「チーチチチチチ チチーチ チチチ」と音が聞こえます。男の子が学校の帰り道で「じーっと」上を見ると家の屋根の上で鳥の親子が歌っています。

その後も「ひゅうひゅう ひゅう さわさわ ざわわ」、「ぶ〜ん ぴと」、「ぴしゃっ ぴちょん」と音が聞こえたら「じーっと」と音が聞こえてくる方を見ます。

最後に聞こえてきた音は「シュッ ボワァ」そして、音が続くのですが、すぐに無音に。そこにあるものは、、、。

広告や書籍、アパレルグッズなどで活躍するイラストレーターが、作も自身で初めて手がけたのは今作がはじめてです。誰にでもわかりやすくしっかりと着色され描かれた絵だからこそ、擬音語とその先の情景がシンプルな文章でも、男の子の心情までも十分に感じることが出来ます。

【丈太郎のひとりごと】

パッと最初に表紙を見た時に「これは和田誠の新刊か!」と今は亡き作家の描いたものだと思ってよく見ると、和田誠的な要素はあるものの、異なる作家であることがわかりました。

中身を見ていくうちに、和田誠だけではなく、おそらく今まで作家が影響を受けたであろう色んな作家の面影が浮かんできました。

作家は1986年生まれ。まだまだ雑誌などでイラストレーターが大活躍し、そして、様々な日本人作家による絵本もたくさん出版されていた時代です。この作家のルーツはそんな幼き頃から思春期に向かうまでの間にあると僕は思います。

文章も絵も極限まで無駄を削ぎ落とし、シンプルに描かれていますが、その分だけしっかりと「ベッタリ」と着色されているのが、最近の絵本の中では新鮮に感じます。

時代性を問わない内容と絵は、何十年前に描かれたと作品と言われたら信じてしまいます。それぐらい普遍性の高い、何十年先にでも新鮮に読める絵本だと僕は思います。

今、子どもたちに人気がある絵本は、キャラクター性が先行している作品が多いですが、このような普遍性の高い作品は、読者に1番近い位置にいる絵本を手渡す者(書店員)として大切にしていきたいと思うのです。

これぐらいシンプルで抜けているぐらいが、本当は良い作品なんだと思います。

余白がたくさんあって最高!

中山信一/作 32P 偕成社【何かの音が聞こえたら、「じーっと」その視線の先にあるものは?】「ゴォーッ」と音が聞こえます。男の子がその先を教室の窓から「じーっと…
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