【今月の新刊!】★文章がなくとも、絵を「読む」楽しさ★『ワニが しごとに でかけます』

【今月の新刊!】★文章がなくとも、絵を「読む」楽しさ★『ワニが しごとに でかけます』

ジョヴァンナ・ゾーボリ/作 マリアキアラ・ディ・ジョルジョ/絵 26P BL出版

【さて、ワニのしごとはなんだろう?絵から想像して楽しめる絵本!】

朝、目覚ましが鳴り響きます。ワニは起きてカーテンを開けると良い天気のようです。パジャマから洋服に着替えて身だしなみを整え、朝食を食べてコートを羽織り、帽子を被り家を出ます。

地下鉄に乗るために駅に向かいます。他の人たちも忙しそうに通勤、通学と思われる光景が広がり、地下鉄の車両は満員です。

仕事先の最寄駅と思われる駅で降りて階段を登ると、そこは様々なお店が並び、ワニは食べ物や花を買いながら仕事場へ着くのです。

さて、ワニの仕事場はどんなところでしょう?

文章がない分だけ、絵の情報量で自由に楽しむことが出来ます。しかし、絵は説明っぽくもなく、様々な大きさのコマ割りであったり、ページ全体に見開きで描かれていたりするため、自然に抑揚がついているように思います。

水彩画と思われる絵も瑞々しく、ノスタルジック風でしっかりとした構図で軽やかにページを読み進めることが出来ます。

【丈太郎のひとりごと】

文章のない絵本は沢山あれど、中には文章がない分だけ絵の情報量が多過ぎてゴチャゴチャした絵本も多いのですが、この作品に関しては必要最低限の情報しか描かれていないため、読み手の想像力により各々の解釈が異なってくる面白さがあります。

僕はこの絵本を開くと、街の喧騒も聞こえてくるし、このジェントルマンであろうワニの行動を追っていくと、どこかスウィンギングジャズが頭の中にBGMとして流れています。それはとても軽快で、ワニが自分の仕事に誇りを持ってやっているような、今日の仕事も楽しくなるように素晴らしい「通勤」をしているのだと思います。

作者は2人ともミラノ在住であったり、ローマ在住であったり、イタリアを拠点として活動しているようです。

イタリアには、2014年に毎年春に開催される全世界中の児童書出版社が集まる「ボローニャ・チルドレン・ブックフェア」に行くために、ボロネーゼの発祥の地でも有名な田舎町であるボローニャに行ったことがあります。

そのためか、地下鉄はボローニャにはありませんでしたが、描かれている街並みにボローニャでの思い出を蘇らせてくれました。

「これぞ、翻訳絵本の絵だよなぁ。」と思わせるクラシカルさと、構図がしっかりとしているため、安心して身を委ねながら読み進めることが出来ます。

しかし、最後にワニの仕事を知った時の驚きと言ったら!これは皆さんにも楽しんで欲しいところです。例えワニの仕事を知ったとしても何度も開きたくなる絵本です。

ウィットさを感じる明るい朝のお話です。

毎朝、このワニのような振る舞いや澄んだ気持ちで通勤したいものです。

ジョヴァンナ・ゾーボリ/作 マリアキアラ・ディ・ジョルジョ/絵 26P BL出版【さて、ワニのしごとはなんだろう?絵から想像して楽しめる絵本!】朝、目覚ましが鳴…
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